No.48 こんな時代があったんだ(機関誌「同方」復刻版を読んで) – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長の窓

No.48 こんな時代があったんだ(機関誌「同方」復刻版を読んで)

2022年4月18日 掲載

日本赤十字社兵庫県支部事務局長 大久保博章


2月から拡大したウクライナ人道危機。毎日のニュースで現地の悲惨な状況が伝えられるたびに、胸が締め付けられる気持ちになる。

そんな中、一冊の本が兵庫県支部に届けられた。機関誌「同方復刻版」
これは、日本赤十字社看護婦同方會(現看護師同方会)が昭和3年に全国的な組織として発足し、機関誌「同方」を発刊したものを、歴史的に貴重な資料として残すべく平成20年から取り組み、発刊しているものである。

届いたのは、昭和9年9月號の復刻版。そこには、近畿地方防空演習における救護作業の概況が報告されている。日本赤十字社兵庫支部(当時)が昭和9年7月26日より3日2晩、不眠不休の状態で取り組んだ演習の様子である。特に化学兵器である「瓦斯救護法」の訓練が盛んに行われた様子が記録されている。

演習は、「7月27日午前9時、湊東区荒田町1丁目に催涙瓦斯弾を林田区御蔵小學校に窒息瓦斯弾の投下があったので救急及収容係は現場に急行し夫々処置を施して救護所に収容した」「午前11時県庁に焼夷弾の投下あり第三、第四、第五救急班は現場に急行した」「収容患者数、痙攣11、窒息8、催涙10、一般外傷8」「午後6時非常警報発せられ班員一同緊張して待機したが空襲はなかった、点燈と同時に燈火管制に入る一同徹宵」等と記載されている。演習に参加した救護班は救護主事1名、救護医院長1名、救護医員8名、救護書記11名、救護看護婦67名(内生徒42名)支部雇員等9名、青年團員20名、使丁7名となっている。

今、ウクライナでは、化学兵器が使われているとの報道もなされている。平和な日本に住んでいる私たちは、遠い世界のことと感じているが、ほんの90年前には、私たちの先輩たちが化学兵器に怯え、備えて訓練を繰り返していたのである。

残念ながら、いつの世も、世界の各地で戦争・紛争が勃発し、多くの方が苦しんでいるという状況はなくならない。

一日も早く、ウクライナ人道危機が収束すること、そして平和な世界が来ることを願ってやまない。