(No.14)日赤の使命に基づく救護体制について – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.14)日赤の使命に基づく救護体制について

2025年6月3日 掲載

事務局長 生安 衛

 6月となり、雨が多く、蒸し暑さを感じる季節となりました。あじさいが彩りを増すこの頃、さわやかな夏を迎える時期に入っていくものと期待しています。平年ベースでみますと、今週末あたりが梅雨入りになるものと思われます。

 さて、大阪・関西万博の開幕から50日を過ぎました。パビリオンの来館者は7万人を超えました。当館への予約は当日の午前中のうちに、全て埋まる一方で、キャンセル待ちの長い列が途切れないことが多く、定員一杯まで調整しながら入場対応をしている状況が続いてます。

 また、1万7千を超えるメッセージもいただき、日赤への期待に対するコメントが寄せられています。これからも、このパビリオンを舞台に、人道や赤十字活動の発信によって、周知や理解を一層求めていきたいと考えております。

(取り巻く深刻な状況)

 近年、気候変動で起こる異常気象の影響による災害は、国内外で多発化しています。地震のほか、山火事、大雨による河川の氾濫、干ばつなど、地球温暖化によって、激甚化・頻発化しています。

 今年1月には南海トラフ巨大地震の30年以内の発生確率が従前の「70~80%」から「80%程度」へと引き上げられ、3月末には新被害想定が内閣府から公表されました。死者は最大29万8,000人、経済被害額292兆円(国家予算の2倍)にのぼり、兵庫県内でも死者5,200人、全壊・焼失は最大5万棟にのぼることなどが示されました。

 また、今年は阪神・淡路大震災から30年目です。震災時に中核であった世代が引退し、記憶や教訓が薄れ、継承が難しくなる、30年限界説を目にすることがありますが、これをみるたびに、当支部としては、意を強くもって、さらなる防災・減災に向けて努力していきたいと考えています。

(日赤の使命に基づく災害救護体制の確保)

 このようななか、「被災者の命と健康、そして尊厳を守る」という赤十字の使命を果たしていくため、私たち日本赤十字社の重要な任務の一つである「災害救護体制」を確保することは極めて重要なことであります。

 日本赤十字社は、2年後の令和9年に、創立150周年を迎えますが、その設立経緯からみても、救護活動が第一の使命であることは言うまでもありません。また、現在、大阪・関西万博で出展しています「国際赤十字・赤新月運動館」でも、強く発信しているのは、災害救護活動であります。

 今年度の救護員体制は、15班309名となります。この体制で赤十字の使命を果たしていきたいと考えております。

 内訳は、姫路赤十字病院・姫路赤十字看護専門学校8班128名、多可赤十字病院2班35名、神戸赤十字病院5班130名、赤十字血液センター16名の体制であり、職種は、医師・看護師・検査技師・診療放射線技師・薬剤師・事務職員などであります。

 この体制により、被災地で、被災者に寄り添う救護活動を行う「救護班」、活動の調整を行う「災害医療コーディネートチーム」、被災者へのこころのケアを実践するための「こころのケア班」を編成できると考えています。

 編成の基本的な考え方としては、救護班は6名体制で、うち、1名が医師、3名が看護師、2名が主事(事務職員・診療放射線技師等)です。さらに、この体制に薬剤師などの他職種の方も加わっていただく場合もあり、8人程度になるケースもあります。

(平時からの救護研修・救護訓練)

 「災害は忘れた頃にやってくる」と言います。また、「備えあれば憂いなし」という言葉もあります。私たち日本赤十字社の職員にとって、大切なのは、災害がいつ来ても、大丈夫である備えをすることです。

 災害時に必要とされる救護を迅速かつ円滑に行うため、平時から訓練・研修を行い、常に災害に対応できる体制を整えるとともに、災害時にはいち早く救護班などを派遣し、救護活動を行えるよう、事前の体制を整えることが極めて重要となります。

 兵庫県支部では、先月24日(土)、25日(日)に「救護班要員研修」を開催し、救護員として必要な基礎的な知識から実践的な技術までを学んでいただきました。

 例えば、災害医療、こころのケア、トリアージ、アセスメント、避難所・診療所運営など、災害救護業務で不可欠な科目の修得です。

 また、この研修の成果を実践的に生かす場として、6月7日(土)に大阪府高槻市で開催される「日本赤十字社第4ブロック(近畿ブロック)合同災害救護訓練」にも参加する予定にしています。

 今年の課題としては、兵庫県や市町などの地方自治体、DMAT (災害派遣医療チーム)のほか、 DPAT (災害派遣精神医療チーム)、JMAT(日本医師会災害医療チーム)、DWAT(災害福祉支援チーム)とも連携を深めたいと考えております。この5月の「救護班要員研修」では、初めて、行政や民間の担当者や関係者に見学いただきました。

 また、大きな災害が起これば、全国の赤十字救護班が協働して活動することになり、全国統一的な知識や技術を体得していることが求められることから、本年度から、本社のカリキュラムをもとに、県独自でアレンジした研修を実施することとしています。

 さらには、支部の職員を対象にした災害対策本部要員研修のほか、被災地での医療救護活動を支援するための情報システムなどの技術的な研修にも力を入れていきたいと考えております。

 その他、予定している主な救護訓練としては、9月24日(水)の海上保安本部巡視船合同訓練(舞鶴市)、11月9日(日)の兵庫県合同防災訓練(姫路市)などを予定しております。

 これらの様々な救護研修や救護訓練を通じまして、救護員としての能力や技術がさらに向上するよう、研鑽に努めてまいります。

 そして、今年度も、県内の姫路・多可・神戸赤十字病院、血液センター、支部などが一丸となって、赤十字の使命を果たすべく、被災者に寄り添う救護に向けた活動を進めてまいりたいと考えております。