(No.20)人道の原点としての海外たすけあい運動について – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.20)人道の原点としての海外たすけあい運動について

2025年12月1日 掲載

事務局長 生安 衛

 いよいよ12月に入り、年の瀬が迫ってまいりました。
 年末という節目の時期にこそ、一年を振り返り、自らの暮らしを見つめ直すとともに、世界のどこかで困難な状況にある人々にも心を寄せてみませんか。
 世界では今も、武力紛争や暴力行為、自然災害、貧困などにより、安全な生活を奪われた人々が数多くおられます。医療、食料、水、住居といった人間として最低限必要なものですら、手に入らない現実があります。
 「NHK海外たすけあい運動」は、こうした厳しい状況に置かれた人々に、人道支援を届ける大切な取り組みであります。その支援は単なる物資などの提供にとどまらず、「あなたはひとりではない」というメッセージを届けているとも考えています。
 この運動によって、人々のいのちと健康、尊厳を守るためのあたたかな支援の輪を広げています。ほんの小さな思いやりが、国境を越えて遠く離れた場所での大きな支えになりますので、ご協力をお願い申し上げます。

(令和7年度「NHK海外たすけあい」キャンペーンの概要)

 日本赤十字社では、1983(昭和58)年から、日本放送協会(NHK)と社会福祉法人NHK厚生文化事業団との共催で、「NHK海外たすけあい」キャンペーンを毎年12月に実施しています。日赤にとって、民間資金を募る一大募金キャンペーンです。
 今年で43回目を迎えます。今年のコンセプトは「人道支援に空白地帯をつくらない」です。
 世界では、約3億人の方々が緊急の人道支援を必要とされています。また、紛争や気候変動の影響によって、多くの人々が脅かされています。しかしながら、人道支援のための資金は減少しています。さらには、支援を届けることが難しい状況にある国もあります。
 これらのことから、赤十字は、いかなる理由でも、人道支援の空白地帯をつくらないよう、「人道・公平・中立・独立・奉仕・単一・世界性」という基本原則に基づく人道支援活動を徹底し、苦しむ人々に必要な支援を届ける意義を広く伝えるために、12月1日(月)から12月25日(木)までの間で募金キャンペーンを実施します。
 寄せられたお金は、日本赤十字社の国際救援・開発協力事業の財源として世界各地で多発する紛争や災害等による犠牲者の緊急支援、保健衛生及び防災・減災等の分野における国際救援・開発協力事業の財源として活用させていただきます。今年は全国で目標額8億5,000万円を目指して実施します。
 また、日本赤十字社の国際活動の認知向上を目指します。「苦しんでいる人を救いたい」という日赤の使命と国際活動の意義をホームページ、ポスターやウェブCMなどで周知し、世界の人道課題について広く啓発します。このことで、寄付者と世界各国の人々をつなぐ橋渡しの役割を果たしていくとともに、活動への共感を広めて、寄付という具体的な協力行動につなげてまいります。
 兵庫県支部としても、海外たすけあいキャンペーンに係る寄付の募集を行いますので、ご協力をお願いします。
 募金の窓口は、兵庫県支部、神戸・姫路・多可の3つの赤十字病院、6カ所の献血ルームのほか、NHK神戸放送局1階(神戸市中央区中山手通2-24-7)においても、期間中の平日10時から18時まで専用窓口を開設し、寄付の受付を行っています。
 また、街頭募金も実施いたします。12月6日(土)にJR三ノ宮駅・交通センタービル周辺、14日(日)にJR姫路駅piole姫路北側において、午後1時15分~2時45分の間、支部職員が各赤十字奉仕団・姫路赤十字看護専門学校生・青少年赤十字メンバーの中高校生の皆様とともに、リーフレットや風船などを配布しまして、募金の呼びかけを行います。

<海外たすけあいの紹介>

https://www.jrc.or.jp/international/contribute/relief/

<特設サイト>

https://www.jrc.or.jp/contribute/help/tasukeai/

<ウェブCM(動画)>

https://www.jrc.or.jp/lp/save365/

(令和6年度のキャンペーンの状況)

 本キャンペーンによる寄付額は、令和6年度7億2,594万円、累計額は約303億円にのぼります。兵庫県支部では、令和6年度約597万円の寄付をいただき、全国の支部の中では第2位となりました。ご協力いただきました皆様、ありがとうございました。
 今年は600万円を目指したいと思っておりますので、引き続きよろしくお願い申し上げます。
 なお、この寄付は、日本赤十字社の重要な事業の一つである「国際活動」の財源に充当され、次のとおり緊急救援、復興支援、開発協力などを行う費用として、活用させていただいています。

(支援事業の概要)

 いただいた多額の寄付金の支援事業の概要につきまして述べさせていただきます。主として3本の柱から成り立っています。
 一つの目の柱は、「紛争に伴う難民・避難民などへの対応」です。
 2022(令和4)年2月から続くウクライナ人道危機、2023(令和5)年10月から事態が深刻化したイスラエル・ガザ人道危機、2017(平成29)年に暴力から逃れたバングラディッシュ南部避難民など、紛争や暴力の影響を受ける人々が今なお世界各地で生活をされています。
 また、コンゴ民主共和国やスーダン共和国など、注目が届きにくく、十分な支援が得られない人道危機も深刻さを増しています。これらの地域では、支援資金が減少し、いわゆる関心の差が支援の差につながる状況が生まれています。「忘れられた人道危機」の存在という課題です。
 今回の「赤十字NEWS 12月号」では、“ご存じでしたか?あの国の苦しみ”というテーマで、コンゴ民主共和国やスーダン共和国等を取り上げておりますので、ご覧いただければと思っております。
 さらには、ガザのように支援することが物理的に困難な人道危機地帯もあり、今年のコンセプトである人道の空白地帯を生み出しかねない重大な課題となっています。「忘れてはならない人道危機」の存在というものです。

<赤十字NEWS オンライン版>

https://www.jrc.or.jp/about/publication/news/

 赤十字は、こうした紛争や暴力で苦しんでいる国や地域において、医療支援、物資配布、こころのケア、給水、生計支援、離散した家族の再会支援、収容所の定期訪問などを通じて、いかなる状況でも人道支援を目指していきます。
 二つ目の柱は、「頻発、激甚化する災害への対応」です。
 世界各地において、気候変動の影響とみられる災害が頻発化しており、食料危機や保健衛生状況などにも深刻な影響を及ぼしています。とりわけ、干ばつや砂漠化などの災害は、資源をめぐる紛争を駆り立てる傾向があるとともに、紛争が長期化すればするほど、災害リスクも増大するとも言われています。
 赤十字は、こうした災害の影響を受けやすい脆弱な立場にある人々に対して、食料支援、現金・物資給付による生計支援、医療・給水・衛生支援、こころのケアのほか、小規模農家への種苗や農具、技術支援など、多角的な支援活動を実施しています。
 三つ目の柱は、「人々のレジリエンスを高めるための取組」です。
 赤十字では、平時から、人々が予測不可能な災害に備えて、自ら対応し、立ち上がる力となる「レジリエンス」を高め、防災教育や救急法の普及などに取り組んでいます。
 紛争のみならず、あらゆる人道危機からの復興や人的・社会的・経済的基盤の再構築には、人々のレジリエンスが欠かせない状況にあります。
 困難な状況にある人々への支援に加えて、「自らのいのちと健康は自分で守る」「人々の尊厳が守られるよう助け合う」という意識を一人一人がもつことが重要です。赤十字は現地のボランティアの方々とともに、地域の生活習慣や文化を踏まえて、病気やけがの予防に向けた啓発活動も実施していきます。
 このように、本キャンペーンは、日本赤十字社の使命である一人一人が持つ「苦しんでいる人を救いたい」という気持ちを結集させ、世界で苦しんでいる人々を救うための取組であります。兵庫県支部・施設の職員はもとより、赤十字奉仕団などのボランティアや青少年赤十字メンバーなどの積極的な参加を得ながら、今年も進めてまいります。
 つきましては、皆様お一人お一人のご理解とご協力を改めてお願い申し上げます。

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