(No.24)春、暮らしの変化に合わせて備えを見直す大切さについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.24)春、暮らしの変化に合わせて備えを見直す大切さについて

2026年4月6日 掲載

事務局長 生安 衛

 兵庫県支部の近隣にあるなぎさ公園では、春の訪れを告げる景色が広がり始めました。新たなスタートを感じさせる季節の到来です。
 4月は、入学、就職、転勤、引っ越しなどによって、街の雰囲気が新たに動き出す季節です。新しい制服、新しい名刺、新しい通学路など、生活が切り替わるこのタイミングこそが、「防災」を見直す絶好の機会だと考えています。
 災害は、いつも同じ場所、同じ形で起こるわけではありません。
 また、私たちの暮らしも、毎年少しずつ変化しています。
 だからこそ、備えは一度整えたら終わりではなく、暮らしの変化に合わせて更新していくことが大切です。
 また、防災・減災において何より大切なのは、迷いを減らし、ためらわず行動することだと思っています。
 本年3月、日本赤十字社では、防災・避難行動の重要性を広く伝えるため、YouTubeにてPR動画【「赤十字は、動いてる!」避難をためらう心篇 】の配信を行っています。
 この動画は、多くの方々の共感を呼び、配信開始から間もない中、すでに約1,000万回再生を超える大きな反響を呼んでいます。防災への関心の高まりと、避難をためらう心という誰もが抱きがちな心理に光を当てたメッセージが、多くの人の心に届いた結果だと感じています。
 動画では、「まだ大丈夫」「自分だけは平気かもしれない」といった迷いが、避難の遅れにつながる様子を描き、早めの行動が命を守ることを上白石萌音さんが問いかけています。本キャンペーンを通じて、一人でも多くの方々が、災害時に「ためらわず動く」きっかけをもっていただければと願っています。


<日赤PR動画「赤十字は、動いてる!」避難をためらう心篇>

 そして、その「ためらわず動く」力は、災害時だけに突然身につくものではありません。日常生活の中で小さな取り組みを積み重ねていくことが、いざという時の確かな判断や行動につながっていきます。この4月から、身近なところで実践してみてはいかがでしょうか。

(引っ越しは、防災の前提が変わる合図)
 4月は、入学、就職、転勤などで、住まいが変わられる人が増える時期です。
 住所が変われば、最寄りの避難所も、危険箇所も、自治会や地域の連絡網も変わります。これまで想定していた、災害時の逃げ方が通用しない可能性があります。
 そのため、まず、すべきことは、市町などが公表するハザードマップの確認です。
 洪水や土砂災害、津波、高潮など、地域の特性によってリスクは異なります。地図を眺めるだけでも「自宅がどんなエリアにあるか」「どのルートが危ないか」が見え、避難の方向性が明らかになります。
 なお、国土交通省・国土地理院のハザードマップポータルサイトが活用できます。地域ごとの洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報などが地図や写真に自由に重ねて表示されます。
<ハザードマップポータルサイト> https://disaportal.gsi.go.jp/

 次に、近くの避難所までの道のりを実際に歩いてみることです。昼間は大丈夫でも、夜間や雨の日、荷物を持った状態だと印象は変わります。坂道、狭い路地、暗がり、川沿いの道、ブロック塀など、歩いて初めて気づくポイントが必ずあります。
 新しい土地での生活が始まる方は、日常の動線を確かめることに合わせて、避難の動線も確かめてみる。それだけで、いざという時の迷いが減ります。

(家族構成の変化は、避難計画の見直しのポイント)
 新生活は、家族の形も変わります。進学や就職でお子さんが遠方に転居されたり、生活時間がずれたり、単身赴任が始まったりします。こうした変化は、避難計画に直結します。
 「災害時にどこで落ち合うか」「連絡が取れない場合はどうするか」を、年度初めに一度だけでも決めておくことが大切です。
 スマートフォンがつながらない、充電が切れるといった場面を想定し、メモの保管場所や伝言方法も含めて簡単に整理しておくと安心です。
 特に小さなお子さんがいるご家庭では、通学路・通園ルートの安全確認が重要です。学校や認定こども園などでの引き渡し方法、集合場所、緊急時の連絡手段など、説明会や配布資料を家族内で共有するだけでも備えは進みます。

(非常持ち出し袋は『自分仕様』)
 備えと言うと、つい「非常食や水を買い足す」ことに意識が向きがちです。もちろん重要なことですが、もう一歩踏み込んで、持ち出し袋を『自分仕様』にすることをおすすめします。
 例えば、常用薬やお薬手帳、メガネやコンタクト用品、乳幼児のミルクやおむつ、女性用品、簡易トイレ、モバイルバッテリー、現金(小銭も含む)、身分証の写しなど、必要なものは、年齢や健康、暮らし方で大きく変わります。
 季節の変わり目である4月は、防寒具と暑さ対策の間にあたります。薄手の上着、レインコート、携帯カイロ、汗拭きシートなどを入れ替え、重量と必要度を見直すと、持ち出し袋が現実的になります。「重くて持てない」袋は、いざという時に持ち出せない可能性があります。持てる重さ、背負える形に整えることが大切です。

(情報の備え―警報・避難情報を受け取れるか)
 災害時は、早く情報を受け取った人ほど、早く動けます。ところが、引っ越しや機種変更をした直後は、自治体の防災アプリや緊急速報の設定が不十分なことがあります。4月はまさにその落とし穴が生じやすい時期です。
 緊急速報メール(エリアメール)の受信設定、自治体の防災メール、天気アプリの警報通知、家族との連絡手段など、一度、スマートフォンの通知設定を点検してみてください。加えて、ラジオや防災無線、近隣の声かけなど、複数の情報源をもつことも有効です。
 情報は「知る」ためだけでなく、「動く」ためにあります。避難情報が出たら、どのタイミングで、どこへ、どう動くのか。判断の材料として情報を使えるように、平時のうちから受け取れる状態を整えておきたいところです。

(春は地域のつながりをつくる季節)
 4月は、地域に新しい人が増える季節です。挨拶の機会が増え、町内会や学校行事などで顔を合わせやすくなります。実はこの「ちょっとしたつながり」が、災害時の大きな支えになります。
 災害時に必要なのは、物資や情報だけではありません。「あの家に高齢の方がいる」「このお宅は乳児がいる」「この道は夜暗い」といった、地域ならではの気づきが命を守ります。普段から声をかけ合う関係があると、安否確認や支援の動き出しが早くなります。
 本支部では、災害時の救護活動に加え、平時から地域での防災・減災の啓発、講習会、ボランティア活動などに取り組んでいます。けれど、地域の主役は、そこで暮らす一人ひとりです。
 春の挨拶が、次の災害への備えにつながるのだと考えると、日常の一歩も少し違って見えてくるのではないでしょうか。

(備えは、暮らしの一部にしてこそ続く)
 備えは大切だと分かっていても、「忙しい」「何から始めたらよいか分からない」と感じる方は少なくありません。そこでおすすめしたいのが、年に一度の点検日を決める方法です。
 例えば、新年度が始まる4月、家計簿をつけ始める日、健康診断の予約を入れる日とセットにして、防災の見直しも行う。水や非常食の賞味期限の確認、持ち出し袋の点検、家族の連絡方法の確認、ハザードマップの再確認などに取り掛かる。注意すべきことは、すべてを一気にやる必要はないと思います。できる範囲で、小さく始め、積み重ねることが、結果として、習慣になります。
 そして、習慣になった備えは、災害が起きたときに力を発揮します。迷いが減り、動きが早くなり、家族や近所の人と助け合う余裕が生まれます。

(春の一歩が、未来を守る)
 災害は、私たちの予定を待ってくれません。だからこそ、生活が切り替わる4月に、「備えを切り替える」ことには意味があります。新しい暮らしの中に、少しだけ防災の視点を入れてみる。スマートフォンの設定を整え、避難所までの道を歩き、家族で少しの時間だけでも話し合う。たったそれだけでも、いざという時の行動は変わります。
 新年度の慌ただしさの中で、暮らしの足元を見直してみては、いかがでしょうか。
 春の小さな一歩が、あなたや大切な人の未来を守る力になります。
 今年度も、本支部として、地域の皆さまとともに、平時からの備えや支え合いなどを広げていけるよう尽力してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。