(No.26)梅雨の時期を迎えて、新たな防災気象情報と備えについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.26)梅雨の時期を迎えて、新たな防災気象情報と備えについて

2026年6月3日 掲載

事務局長 生安 衛

 

 

 

 6月、梅雨入りを迎えています。空模様が不安定となり、しとしとと降り続く雨に、時に激しい雨が重なる季節です。
 近年、線状降水帯による集中豪雨や短時間の激しい雨による水害が全国各地で相次いでおり、兵庫県内においても、決して油断できない状況が続いています。
 こうした中で私たち一人ひとりに求められているのは、「まだ大丈夫」という従来の感覚を見直し、早めの避難行動をとる意識を一層高めていくことではないでしょうか。
 そのような中、5月28日、気象庁から新たな「防災気象情報」が発表され、私たちに伝えられる情報は新たな段階へと進みました。今回の見直しは、危険度や取るべき避難行動をこれまで以上に分かりやすくすることで、「より早く危険に気づき、適切な行動につなげる」ことを目的としたものと考えます。
 梅雨を迎える今の時期だからこそ、こうした変化の内容を正しく理解し、日々の備えに活かしていくことが大切です。そこで今回は、新しい防災気象情報を踏まえ、私たちがどのような備えをしていくべきかについて考えていきたいと思います。

(水害は「突然の日常化」で起こる)
 この時期の大雨による災害の特徴は、ある日突然、日常が非日常へと変わる点にあります。朝まではいつもの通勤・通学風景であったものが、数時間後には道路が冠水し、避難が必要になるといった、急激な変化に見舞われることがあります。
 特に警戒したいのが、短時間に狭い範囲へ集中して雨を降らせる「線状降水帯」です。同じ場所で強い雨が降り続くことで、河川の水位が急激に上昇し、都市部においても浸水被害が広がるおそれがあります。また、山間部では土砂災害の危険性が一層高まり、わずかな判断の遅れが被害の拡大につながることもあります。
 重要なのは、「避難情報が出てから動く」のではなく、「危険性が高まる前に行動を開始する」という意識を持つことです。新たな防災気象情報を自分自身の問題として捉え、状況の変化に応じて早めに判断・行動することが、結果として命を守る行動につながるものと思います。
 現在、日本赤十字社では、防災・避難行動の重要性を広く伝えるため、YouTubeで、上白石萌音さんによるPR動画「避難をためらう心篇」の配信を行っています。この動画は、避難をためらう心理をテーマに、「まだ大丈夫」「自分だけは平気かもしれない」などの迷いが、避難の遅れにつながる様子を描いていますので、是非ご視聴ください。

<日赤PR動画「避難をためらう心篇」>
https://youtu.be/A5w5pz6Xu-Y?si=7qaBwk0q_iqYDTlK

(新たな防災気象情報)
 気象庁は、河川氾濫、大雨、土砂災害、高潮の4種類の災害の際に発出する警報や注意報を、5段階のレベルに分類し、新たな防災気象情報として再編しました。「今どれくらいの危険度で、どう行動すればいいのか」を分かりやすく伝えるために見直された仕組みになっています。
 これまでの防災気象情報は、災害ごとに「警報・注意報」や「警戒情報」など表現が異なり、危険度のレベルもまちまちで混乱を招くという声を多く聞いていましたが、今回、すべての情報が「警戒レベル(レベル1~5)」で整理され、名前を見ただけで危険度の目安が分かるようになりました。
 新防災気象情報は、警戒レベルの名称を付したうえで、5段階に整理されています。具体的には、レベル5は「特別警報」、レベル4は「危険警報」、レベル3は「警報」、レベル2は「注意報」、レベル1は「早期注意情報」とされています。例えば、大雨の場合はレベル5であれば「レベル5大雨特別警報」、高潮の場合は「レベル5高潮特別警報」といった形で示されます。

<新たな防災気象情報について(令和8年~)>
https://www.jma.go.jp/jma/kishou/know/bosai/keiho-update2026/index.html

(レベル4は全員避難、レベル3は高齢者などの避難)
 重要なのは、警戒レベルごとに取るべき行動が明確に示された点です。レベル4は「全員避難」、レベル3は「高齢者等の避難開始」のタイミングと位置付けられています。
 最も危険度が高いレベル5は特別警報に相当し、すでに災害が発生している可能性が高く、命の危険が差し迫っている状況を示しています。この段階では直ちに身の安全を確保する行動が求められます。一方、レベル4は危険な場所から全員が避難すべき段階であり、避難行動の判断のタイミングといえます。また、避難に時間を要する高齢者や障がいのある方などは、レベル3の段階で避難を開始することが重要とされています。
 特に留意すべきことは、レベル5はすでに安全な避難が難しい状況である可能性が高いという点です。そのため、この段階まで待つのではなく、レベル4までに確実に行動を起こすことが重要です。すなわち、「避難は早めに」という考え方が、これまで以上に強く示されているといえます。
 さらに、新しい仕組みからは、「指示を待つのではなく、自ら判断して行動する」ことの重要性が強く示されていると感じます。気象情報は自治体の避難指示に先行して発表されることが多く、警戒レベル3や4の段階で、自分のいる場所の危険性を把握し、早めに行動を開始することが求められているように思います。
 また、気象庁が提供するインターネットサービス「キキクル(危険度分布)」では、大雨に伴う「土砂災害」「浸水害」「洪水害」の危険度が、地域ごとに地図上でリアルタイムに示されています。危険度は色分けで直感的に表示されるため、自分の居住地や周辺地域の状況を一目で把握でき、避難のタイミングを判断するうえで非常に有効です。
 いざというときに迷わないためにも、日頃から、これらのことを理解しておくことが、命を守ることにつながるものと感じます。

<キキクル>
https://www.jma.go.jp/bosai/risk/#elements:flood/lat:34.052659/lon:135.000000/zoom:5/colordepth:normal

(自分の地域で何が起こるかを知っておく)
 気象情報を効果的に活用するためには、自宅や職場、学校などの周辺にどのようなリスクがあるのかをあらかじめ理解しておくことが不可欠です。ハザードマップには、浸水想定区域や土砂災害警戒区域などが示されており、これらを確認することで、自宅周辺が浸水しやすい地域なのか、あるいは土砂災害の可能性があるのかを把握することができます。さらに、どの程度の降雨で影響が生じる可能性があるのか、どの方向へ避難すべきかといった具体的な行動をイメージすることにもつながります。その結果、実際に気象情報を受け取った際の判断が格段にしやすくなるものと考えます。
 また、避難場所とそこまでの経路を事前に確認しておくことも重要です。梅雨の時期は、暗さや視界の悪さ、増水した側溝など、日常とは異なる危険が潜んでいます。どの道が安全か、危険な箇所はないかを確認しておくと、いざという時の迷いが減ります。特に側溝や用水路は、大雨時に見えにくくなり転落の危険があるため注意が必要です。

(避難の選択肢をもっておく)
 すべての人が同じ行動を取る必要はないと考えます。例えば、自宅が浸水想定区域外にあり、建物の安全性が確保されている場合には、在宅避難という選択も有効です。一方で、差し迫った危険がある場合には、早めに避難所へ避難するといったように、それぞれの状況に応じた適切な判断が求められます。
 なお、在宅避難を選択する場合には、一定期間生活できる備えが不可欠です。飲料水や非常食はもちろんのこと、停電に備えた照明やモバイルバッテリー、簡易トイレなども準備しておくと安心です。さらに、梅雨の時期は湿気が高いため、食品の保存方法にも注意し、定期的な点検や入れ替えを行うことが望まれます。このような日頃の備えについても、今こそ見直しておきたいところです。

(地域で支え合う備えの重要性)
 災害時には、地域での支え合いが大きな力となります。高齢者や障がいのある方など、自力での避難が難しい方に対しては、周囲の気づきや一声が大きな助けとなります。日頃からの関係づくりが、災害時の安心につながります。
 梅雨の時期は外出の機会が減りがちですが、だからこそ日常の声かけや見守りを大切にしたいと考えます。
 日本赤十字社は、地域と連携しながら、災害時の救護活動や平時における救急法講習、防災教育などに取り組んでいますが、その基盤となるのは地域のつながりです。日頃の挨拶や気配りといった何気ない関係が、非常時の安心へとつながります。さらに、地域の一員として一人ひとりができる役割を考え、行動することが、災害に強いまちづくりにつながるものと考えています。

(情報を行動へ)
 新たな防災気象情報は、私たちに危険を知らせる重要な手がかりです。しかし、それを活かせるかどうかは、一人ひとりの意識と行動に委ねられています。
 梅雨のこの時期を機に、自分や家族の備えを改めて見直し、いざという時にどのように行動するかを確認しておくことが大切です。日頃の小さな備えの積み重ねが、確かな安心につながります。
 日本赤十字社兵庫県支部といたしましても、地域の皆さまとともに災害への備えを一層推進し、いのちと健康を守る活動に取り組んでまいります。この梅雨の時期が、「備えを見直すきっかけ」となることを心より願っております。