(No.22)少雨乾燥の時期にいのちと健康を守る備えについて – 日本赤十字社 兵庫県支部

事務局長だより

(No.22)少雨乾燥の時期にいのちと健康を守る備えについて

2026年2月9日 掲載

事務局長 生安 衛

 立春が過ぎましたが、厳しい寒さが続いています。
 日本海側を中心に大雪が続き、記録的な降り方となった地域もあり、各地で平年を上回る積雪となっています。この気候は、北極付近の寒気が南下し、日本付近に長期間停留したことや、大陸からの風が合流する「日本寒帯気団収束帯」の影響が要因であるとの見方があります。
 総務省消防庁の発表(2月4日)によると、1月20日から日本海側を中心に続いた大雪により、雪下ろしなどの事故で、亡くなられた方は8道県で35人、負傷者は14道府県358人に上ったとありました。兵庫県でも重傷を負われた方がおられるとのことです。
 あわせまして、太平洋側を中心とした地域で、30年に1度の少雨が続いています。1月の降水量は、近畿などの広い地域で過去最少となったと聞きます。県内では神戸市や姫路市などの7つの観測地点で、1月の降水量がゼロであったということには驚きました。
 少雨の傾向は2月も続くようで、雨が降らず、乾燥しやすい状態が続くことが見込まれます。今後も、気候変動の影響で、少雨に見舞われる地域が増えると予測されています。
 これらのことから、今回は、降水量が平年より少ない状態が一定期間継続し、空気や土壌の水分量が著しく低下し、乾燥する「少雨乾燥」の影響をテーマに留意したい点などを述べたいと思います。

(防災の面からの影響)

 まず、防災の観点から見た少雨乾燥の影響について述べます。
 2月は、一年の中でも特に火災リスクが高まる季節と言われています。空気は乾燥し、強い風が吹き、日常的には、ヒーターやこたつなどの暖房の使用のほか、たき火や野焼きなどが行われる地域もあります。
 今年に入り、1月8日から24日の17日間、山梨県上野原市と大月市にまたがる扇山で林野火災が発生し、けが人や建物への被害はなかったものの、約396ヘクタールが焼失しました。さらに群馬県をはじめ各地で林野火災が起こっており、県内では1月24日に淡路市の山林で出火し約1ヘクタールを焼き、約15時間後に鎮火しました。
 とくに、昨年2月26日に発生した岩手県大船渡市の林野火災は、平成以降で国内最大規模となる延焼面積約3,370ヘクタールに及び、死者1名、住宅など少なくとも266棟が焼失、4,500人以上に避難指示が出されるなど、地域社会に甚大な影響を及ぼしました。降水量の記録的な少なさによる乾燥や強い風が、火の勢いを想定以上のスピードで拡大させた事件ともいえるのではないでしょうか。
 これを受けて、消防庁及び林野庁は「大船渡市林野火災を踏まえた消防防災対策のあり方に関する検討会」を開催し、8月に報告書を取りまとめ、本報告書を受け、気象庁は消防庁及び林野庁とともに、記録的な少雨時において火の取り扱いに対する注意喚起を行う新たな取組を開始しています。

<国土交通省 気象庁 林野火災予防のための新たな取組を開始します>

https://www.jma.go.jp/jma/press/2512/17a/20251217_rinyakasai.html

<林野火災予防ポータルサイト>

https://www.jma.go.jp/jma/kishou/rinya/rinyakasai.html

 これらの動きの一環として、今年1月から新たに、市町村が条例に基づいて注意報や警報を出せるようになりました。
 乾燥や強風といった気象条件から、林野火災が発生・拡大しやすい状況にあることについて、より明確に地域の皆様へ伝えるための情報です。林野火災は、発生してからでは対応が難しく、初期段階での注意喚起と行動の抑制が極めて重要な災害です。
 林野火災警報・注意報が発令されたときには、「山に入らない」「火気の使用を控える」「たき火や火入れ等を見合わせる」「消火用の水を用意する」といった、具体的な行動判断につなげるための重要なサインとして位置づけていただきたいと考えております。
 なお、先月20日、総務省消防庁が令和7年版消防白書を公表しました。近年頻発・激甚化する災害への対応、特に大規模林野火災を新たな重要課題として特集を組まれているほか、「マイナ救急」の全国展開、消防団を中核とした地域防災力の強化、消防分野におけるDX・新技術活用の推進、国民保護施策の推進などについて掲載されていますので、興味のある方はご一読ください。

<令和7年版消防白書>

https://www.fdma.go.jp/publication/hakusho/r7/69377.html

 いずれしましても、日常的に、乾燥した環境では、紙類や木材、衣類などの可燃物が燃えやすくなり、わずかな火種でも火災が発生・延焼しやすくなりますことに意識をもっていただき、少雨乾燥期においては、火の取り扱いへの注意喚起、初期消火体制の確認、地域ぐるみの防火点検など、予防的な行動を徹底することが重要であると考えます。
 昨年3月に掲載させていただいた「事務局長だより3月号(No.11)火災への注意について」もあわせてお読みいただくとありがたいです。

<事務局長だより 令和7年3月号(No.11)火災への注意について>

(生活面での影響)

 次に、生活面での影響です。
 空気が乾燥しやすい季節において、気象庁の「乾燥注意報」は、火災や健康被害のリスクが増していることを知らせる気象注意報ですので、発表された際には、火の取り扱いや暖房器具の使用に注意し、室内の湿度管理や静電気対策をとる必要があります。
 この乾燥注意報は、空気の湿度が非常に低くなり、火災が起こりやすい気象条件が予想されるときに発表されますので、注意が必要です。
 日常生活では、まず、定期的に行うべき火災予防点検が欠かせません。この点検は、火災が発生しにくい環境を整えるだけでなく、万が一火災が発生した場合に被害を最小限にとどめるための重要な役割を果たします。例えば、調理機器周辺の油汚れやほこりの除去、石油ファンヒーターなどの暖房機の定期的な点検・メンテナンスのほか、私はストーブを可燃物から最低でも1メートル以上離して設置するようにしています。近くに可燃性の高いものが置いてあると、転倒や熱が伝わった場合に火が燃え移る恐れがあります。
 また、空気の乾燥は、皮膚や喉、鼻などの粘膜を乾燥させ、防御機能を低下させる要因となります。このため、インフルエンザやノロウィルスなどの感染症にかかりやすくなるほか、皮膚トラブルや呼吸器症状を引き起こす可能性が考えられますので、こまめな手洗い、うがい、不用意に口や鼻を触らない、マスク着用は基本です。
 特に、のどの渇きを感じにくい高齢者や、活動量の多い子ども、屋外で働く方は、意識的な水分補給が必要です。水や麦茶、経口補水液を状況に応じて使い分けましょう。
 目や皮膚の乾燥には、室内湿度の調整、目薬の点眼、ハンドクリーム等による保湿、こまめな換気が必要になります。感染症の流行期には、手指衛生と咳エチケットに加え、室内の過乾燥を避けることも予防につながります。
 のどが痛い、微熱が続くなどのサインは、からだが発する渇きの合図かもしれませんので、無理をせず、早めの休息と受診を検討されたらどうでしょうか。
 また、冬の乾燥した室内では静電気を起こしやすくなります。静電気を防ぐには、綿や絹など吸湿性の高い天然繊維の衣服を身に着けることや手肌の保湿習慣が効果的であると聞きます。
 このように、こまめな水分補給、室内湿度の適切な管理、体調変化への早期対応などの取り組みは、健康被害を軽減するだけでなく、日常生活における健康増進にもつながるものであるとも考えております。

(水不足による影響)

 さらに、水不足による生活への影響です。少雨状態が長期化すると、生活用水や農業用水、工業用水の供給に制限が生じ、地域経済や県民生活に大きな影響を及ぼします。特に渇水時には、衛生環境の悪化や生活の質の低下も懸念されます。
 例えば、受水槽や貯水タンクの点検、非常用飲料水の備蓄(1人1日3リットル×最低3日、可能なら7日分)を、家族構成や季節に合わせて見直しましょう。
 また、厳しさを増す水事情に向けて、私たち一人一人が節水への取組や心がけを強めることが重要だと考えます。
 例えば、洗濯の頻度・時間帯の工夫、シャワーよりも風呂の利用、風呂水の再利用、食器の汚れを拭き取ってから洗うなど、小さな節水の積み重ねが、渇水期の負担を和らげるのではないでしょうか。
 このような家庭や事業所における飲料水の備蓄、節水行動などの平時からの備えは、非常時の混乱や不安を軽減する鍵になるとも考えます。
 「少雨乾燥」は、火災の多発、健康被害の増加、水資源の不足などを同時に引き起こし、人々の生活や社会基盤に複合的な影響を及ぼす可能性が高いものと感じます。
 そして、気候変動の影響も相まって、少雨乾燥は一時的な異常ではなく、今後も繰り返し直面する課題として認識する必要があるものとも考えます。
 発生が予想される重要なリスクであり、私たち一人ひとりが日常の中で備えを積み重ねていくことが不可欠だと思います。
 火の用心、健康管理、水の大切な使い方といった基本的な行動の積み重ねこそが、家庭や地域、社会全体の安全と安心につながります。
 本支部としても、人道の立場から、いのちと健康、尊厳を守るための活動を継続し、少雨乾燥への備えも発信していきたいと思っています。